本研究の目的は、骨誘導能を有する非コラーゲン性蛋白質である骨形成因子を用いてマウス大腿四頭筋内に実験的異所性骨化を形成させ、当該関節に運動負荷や不動化を与え、それらの新生骨形成量への影響を見るものである。牛皮質骨から4モル・GuHCl可溶性、0.5モル・GuHCl不溶性かつ水不溶性画分を粗製骨形成因子として抽出・凍結乾燥し、新生骨形成能を有することを確認後、10mgずつマウス大腿四頭筋に移植した。移植肢に対し、1)運動+固定群(CPM装置にて膝および股関節を毎日20分屈伸後、ギブス固定)2)関節不動化群(膝および股関節をプラスチックギブスで固定)3)自由運動群(移植のみ施行)の3群を作成した。移植3週間後には、すべての移植肢の大腿四頭筋内にsoftex X-Pにて異所性骨化を認めた。骨化部を周辺軟部組織とともにサンプリングし、1000℃で1時間焼灼し、新生骨灰分重量を求めた。結果は運動+固定群で2.95mg、関節不動化群で1.98mg、自由運動群で2.12mgの新生骨形成量となり、運動+固定化群で他の二群より有意に多い骨形成量を認めた。組織学的検討では、いずれの群においても移植早期から骨形成因子周辺の筋組織に筋管細胞(myotube)が現れ、周辺組織の脱分化を示す所見であった。移植後2週間目では運動+固定化群では、他の2群に比べ周辺の線維性組織内に小出血層や血管の増生を認めた。しかし、n数が未だすくなく、普遍的所見としての確証は得られていない。ついで移植肢に対しすべてを運動+固定群とし、早期運動群(移植後7日間運動負荷)、中期運動群(その後の1週に運動負荷)、晩期運動群3週目に運動負荷)の三群間で同様に新生骨形成を比較したが灰分重量に群間の有意差は認めなかった。
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