研究概要 |
本年度は,予定していたリハビリテーション病院における脳血管障害患者の調査が,病院の事情で平成11年4月からに延期されたため,対象群として現在健康で社会的な日常生活を送っている高齢者(大阪府老人大学受講生のうち協力の得られたボランティア)の調査を先行した.対象は,65歳以上の高齢者171名(男性88名,女性83名,平均年齢66.3歳)で,口腔内診査,義歯装着状況,咬合力測定,咀嚼能率測定を行った.その結果,上下顎間に咬合支持を有する群と比較して,咬合支持を喪失した群では咬合力および咀嚼能率が約50%低下することが明らかとなり,高齢者の咀嚼機能に対して咬合支持が大きな影響を及ぼしていることが明らかとなった. 一方,平成10年度研究者らの診療科(大阪大学歯学部附属病院第二補綴科)に来院した高齢患者(65歳以上)の中で脳血管障害の既往歴を有する者18名(男性11名,女性7名,平均年齢73.9歳)をリストアップし,口腔内状況と咀嚼機能における問題点を調査した.18名中10名が咬合支持を喪失しており,同時に義歯の機能性に問題を認め,上記の健康な高齢者と比較して低い咬合力ならびに咀嚼能率を示した. 本年度における以上の調査から,高齢者の咀嚼機能の標準値が得られるとともに,脳血管障害患者の調査において,咬合支持と咀嚼機能の関係に焦点を当てて分析すべきであるという示唆が得られた.
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