研究概要 |
今年度の検討課題は,1)調査対象となる被験者の選択基準を作成する上で,脳卒中例での口蓋帆挙筋筋電図に共通性があるかどうかを検討する,2)軟口蓋挙上装置(PalataI LiftProsthesis:PLP)に疲労抑制効果があるか,であった.既に口蓋裂例に3いて確立した口蓋帆挙筋活動の予備能の評価方法(日口蓋誌,22(1):22-31,1997.,音声言語医学,38(4):337-343,1997.,日口蓋誌,21(1):28-34,1996)を用い,既に報告した脳卒中例での口蓋帆挙筋活動の予備能に関する所見(音声言語医学,39(1):16-23,1998)に症例間に共通性があるかを,当部患者の中から3例を対象にして検討した.その結果,1.脳卒中例では共通して,発音時の筋活動は最大筋活動の100%近傍にあるか,もしくは全く筋活動が示されないかの二極性の分布をすること,2.二極性を示す音素には共通性はないこと,3.個人内でも共通した音素であっても後続母音によって様相が異なることが示された.このことにより,脳卒中例での口蓋帆挙筋活動には音素毎の分布パターンに二極性があることが明らかになり,口蓋帆挙筋が発音時に容易に疲労することが示された.つづいてPLPに疲労抑制効果があるかを口蓋帆挙筋活動を指標にして,200音連続表出行動によって疲労が惹起され,さらに疲労がPLP装着によって軽減されるかを口蓋裂例をモデルに検討した.その結果,PLP非装着時には表出開始後の表出数の増加に伴って口蓋帆挙筋活動の変動が大きくなるものの,装着時の筋活動には表出音素数の増加とは相関ぜず一定の筋活動であることが明かとなった.このことにより,脳卒中例においてもPLP装着により口蓋帆挙筋疲労が軽減される可能性が示唆された.
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