研究概要 |
軟口蓋挙上装置(PLP)により関連筋の疲労を防止した条件下に,鼻腔内に外部より陽圧を負荷する(Continuous Positive Air Pressure:CPAP)ことによって関連筋賦活プログラムが構成できるかを脳卒中症例を対象に以下の実験で検討した. 1.脳卒中例における音声言語活動時の口蓋帆挙筋活動の共通性の有無 2.PLP装着による口蓋帆挙筋活動の疲労抑制効果 3.PLP装着下にCPAPを行ったときの口蓋帆挙筋活動の変化 4.PLP装着下に在宅CPAPを行った際の鼻咽腔閉鎖機能の変化 その結果,1.発音時の筋活動は最大筋活動の100%近傍にあるか,もしくは全く筋活動が示されないかの二極性の分布をすること,2.二極性には音素特異性や共通性がないこと,3.個人内でも同じ子音音素であっても後続母音によって様相が異なることが示された.非装着時には表出数の増加に伴って口蓋帆挙筋活動の変動が大きくなるものの,装着時の筋活動は表出音素数の増加とは相関せず一定の筋活動であることが明かとなった.一方疲労性についてMPF(Mean Power Fequency)により検討したところ,装着時にはMPFの経時的低下は小さくなり,PLPの疲労軽減効果が認められた.装着下に現有する実験的鼻腔内陽圧負荷装置により持続的に鼻腔内に種々の高さの陽圧を負荷し,PLPにより疲労を軽減した状態でCPAPを行うことで口蓋帆挙筋機能を賦活できるかを検討した結果,CPAP負荷により健常者ではPLP装着下にCPAPを行うと筋活動が上昇する結果が得られた. 装着下に在宅CPAP訓練を行った結果,CPAP負荷時の対応は症例毎に異なり,若年例や発症から管理下に置かれた症例では対応したが,高齢者や長期放置例では,CPAPへの対応が認められなかった.一方,脳卒中の責任病巣の大きさや部位との関係は見られず,患側健側の明確な分離は無かった.
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