研究概要 |
【研究目的】難治性の拡張型心筋症や虚血性心筋症に対する温熱性血管拡張療法の効果発現機序に関して、末梢血管の予備能改善を評価した。まず末梢血管の予備能評価法を検討し、次に温熱性血管拡張療法前後における末梢血管機能を検討した。 【研究方法】対象は、拡張型心筋症11名(62±15歳)と、健常者11名(39±7歳)で検討した。末梢血管の予備能評価として、指尖容積脈波を心電図自動解析装置(フクダ電子)により計測した。また、内皮依存性末梢血管拡張反応の評価として、前腕動脈におけるflow mediated dilatation(FMD)を断層エコー法(ATL社)により計測した。温熱性血管拡張療法は、静水圧の無い遠赤外線乾式サウナ治療室を用いて、1日1回60℃15分間で施行し、その直後30分間の保温を追加した。効果判定は、週5回2週間、計10回のサウナ浴の前後にて行った。 【結果】安静時の指尖容積脈波から得られる一心拍あたりの平均面積は、健常者、拡張型心筋症患者においてそれぞれ354±171mm^2,179±109mm^2と健常者が有意に高値であった(P<0.01)。また、健常者において2週間の温熱療法前後での%FMDは、動脈血遮断解除後60秒後に各々4,1±1.8%,5.8±2.1%と温熱療法後において有意な増加を示した(P<0.05)。 【まとめ】拡張型心筋症患者は末梢血管予備能が健常者と比較して低下していることが示唆された。また、温熱療法の効果発現機序の一つとして末梢血管内皮機能の改善が示された。 【結語】温熱性血管拡張療法は、末梢血管予備能が低下している拡張型心筋症や虚血性心筋症に対し、末梢血管内皮機能を改善させることにより有効であることが示唆された。 【今後の展望】心不全患者に対する温熱性血管拡張療法の効果発現機序の一端をこの研究で明らかにしたが、いまだ長期予後に対しては確立しておらず、今後長期予後に関してさらに研究を進めていく必要があると思われる。
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