今年度は運動失調の機能障害の評価票作成と信頼性及び妥当性の検討の一部を行った。 A) 運動失調の機能障害の評伽票作成:身体を左、右の上肢、下肢及び体幹に区分してそれぞれ静的、動的運動機能を評価する目的で、合計1・1項目で構成される評価票を作成した。評価項目は上肢偏倚試験、指鼻試験、指指なぞり試験、下肢偏倚試験、膝踵試験、踵脛なぞり試験、下肢体幹立位保持試験、足踏み試験、移動、腰掛け保持試験、体幹前屈嶽験からなる。各項目は到達範囲の広さとベースの広さに対応して尺度付けを行い、試験は開眼・閉眼を区分して行うこととした。 B) 信頼性及び妥当性の検討:今年度は失調症・平衡機能障害を有する患者50例を対象として運動失調の評価を行った。対象の内訳は脊髄小脳変性症25例、小脳・脳幹部の出血・梗塞・腫瘍20例、その他5例、平均年齢57.0±13.1歳、男女比28:22であった。上肢項目(指鼻試験)について基準関連妥当性の検討を行うため点打ちテスト(厚生省番髄小脳変性症研究班)を行った。また26例については、最初の評価から1〜4週後に再評価を行い、検者内信頼性(test-retest reliability)をカッパ統計量(κ)で検討した。結果は指鼻試験と点打ちテストについてSpearmanの順位相関係数を求めたところ4項目中3項目で、有意水準(両側)10%以内となった。検者内信頼性について、κ値は0.16〜0.76であり、34項目中30項目でκ>0.40であった。今回検討を行った範囲で、作成した評価票は実用に耐えられる信頼性及び妥当性を有しているものと考えられる。尚、現在も対象を増やしているところであり、検者間信頼性や動作解析装置を用いた妥当性の検討を検討及び試行中である。
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