研究概要 |
【はじめに】我々が作成した運動失調の機能障害評価票は上肢,下肢及び体幹に関するテストバッテリーがあり,11種類の大項目からなる。昨年度に引き続き,今年度は評価票の信頼性及び妥当性の検討及び運動失調を肴する患者の動作解析を行った。【対象・方法】対象は運動失調を有する患者116例で,その内訳は脊髄小脳変性症50例,小脳・脳幹部の出血・梗塞・腫瘍39例,ウェルニケ脳症4例,その他22例,平均年齢53.4±15.3歳,男女比65:51であった。下肢・体幹機能を評価する5項目について基準関連妥当性を検討するため,24例で運動失調の運動機能ステージ(立野)の評価を行いSpearmanの順位相関係数を求めた。次に20例について,検者間信頼性をカッパ統計量(weightedκ)で検討した。評価結果について,因子分析も行った。また,7例を対象として,歩き始めの3次元動作解析を行い,体重心と左右脚合成の床反力中心の経時的変位について,健常者のデータとの比較,検討を行った。【結果・考察】下肢・体幹機能の評価結果と運動失調の運動機能ステージの相関係数は0.422〜0.874ですべて5%水準で有意な相関を認めた。検者間信頼性について,weighted κ値は0.21〜0.90であり,34項目中32項目でweightedκ>0.40であった。因子分析の結果8つの因子が抽出された。指指なぞり試験,下肢偏倚試験,踵膝試験,踵脛なぞり試験,体幹前屈では単一の因子に最大負荷量を有しており,因子的独立性を有していた。以上より我々の検討を行った範囲で作成した評価票は大多数の項目が実用に耐えうる妥当性,信頼性を有しているものと考える。また,動作解析の結果,健常者と運動失調患者で歩行開始時の動作パターンに違いがあることを指摘する事ができた。
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