研究概要 |
本研究の目的は、骨芽細胞によるサイトカイン産生に力学的負荷が与える影響について検討することである。負荷する静水圧として、1Mpaの生理的圧力から50Mpaの非生理的圧力を設定し、ヒト骨芽細胞様細胞株MG63およびその対照としてヒト線維芽細胞株TIG3に2時間負荷した。MG63は大気圧中では紡錘形であったが、50MPaの静水圧負荷を与えた場合のみ可逆性の形態変化を認めた。各静水圧負荷後、トリパンブルー色素染色を行ったが、いずれの圧でも細胞死は認められなかった。次にMG63とTIG3に各種静水圧負荷を加え12時間および24時間後に培養上清を採取し、IL-1α,β,IL-6,IL-8,TNFα,INFα,γの培養上清中の濃度をELISAによって測定した。IL-1α,β,IL-6,TNFα,INFα,γの培養上清中濃度はすべての圧力負荷後で検出限界(20pg/ml)以下であった。一方IL-8の濃度は負荷12時間後、50MPa負荷では負荷なしに比べ約4.1倍で、統計学的に有意差を認めた(p<0.05)。24時間後、50MPaでは負荷なしに比べ約2.4倍であり、負荷後24時間でも有意差を認めた。対照のTIG3ではIL-8濃度はすべての圧力負荷において検出限界以下であった。MG63におけるIL-8mRNAに対するNorthern blotでは、50MPaの圧力負荷後IL-8mRNAの発現の亢進がみられ、遺伝子レベルでの発現の亢進を確認した。またHSP70mRNAは、50MPaの静水圧負荷後に発現が亢進しており、50MPaの圧力負荷が非生理的であることを裏づけていた。以上のことから骨芽細胞において非生理的な過度の力学的負荷が加わった場合、骨芽細胞ではIL-8の産生が直接促されることを初めて明らかにした。これは,RAなどの関節疾患の骨破壊を考える上で重要な事実である。
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