本研究は高齢障害者、すなわち現にQOL(quality of life、人生の質)が低下しているか、低下の可能性の高い高齢者において、そのQOLを向上させるための具体的な方策を探求し有効なプログラムを確立しようとするものである。その際重要なことは第一にQOLは高齢障害者本人だけでなく家族と本人との相互作用において捉えられなければならないことであり、第二にはQOL向上の実現は狭義のリハビリテーション(医学的リハビリテーション)だけでなく、社会福祉を含む広義の総合的リハビリテーションによってはじめて可能になることである。 2年目となる本年度は昨年の成果をふまえ、高齢障害者とその家族におけるQOL低下の悪循環の要因分析、客観的QOLの3レベル(生物的レベルのQOL、個人レベルのQOL、社会レベルのQOL)の間の相互関係および客観的QOL低下と主観的QOL低下との相互関係を把握・分析することを主目的として、昨年の調査対象者のうち首都圏に在住するものを中心に、前年度よりも掘り下げた面接調査を行った。対象は、脳卒中、骨折等について医学的リハビリテーションを受けた後に自宅に復帰し在宅生活を送っている人々とその配偶者である。対象者の一部には面接とともに、生物的レベルのQOLの客観的把握のために、機能障害に関する診察・検査をもおこなった。 以上の研究の結果、1)高齢障害者本人のQOL低下によって家族のQOLも低下し、悪循環を形成するという昨年度に確認された現象の発生機構、2)客観的QOLの3レベル間の相互作用、3)客観的QOL低下と主観的QOL低下との相互関係、等のメカニズムについて多数の興味深い結果が得られた。
|