研究概要 |
1.研究目的:機能的電気刺激(FES)を臨床応用する際には,刺激筋の筋疲労により目的とする姿勢や動作が維持できなくなることが問題となる.本研究では,ラットの骨格筋を用いた持続的電気刺激において,張力と誘発電位の経時変化を調べ,筋疲労の発現を予測するのに適当な電気生理学的パラメーターを求めることを最終目的とする. 2.研究方法:16週齢雄ウイスター系ラットの前脛骨筋(TA)およびヒラメ筋(SOL)を被検筋として,2ch型電気刺激装置を用いて,筋肉を直接刺激した際に生じる等尺性張力と誘発筋電図を記録した.2対の刺激針電極と5個の表面電極列から成る小型特殊電極を独自に作製して,筋膜上に固定して用いた.電気刺激条件は周波数20Hzおよび40Hz,パルス持続時間0.2ms,強度は1.6mAとして,30秒間の持続刺激を行った.誘発筋電図は,隣接した表面電極の双極誘導にて4chで記録し,FMテープレコーダーに保存したあと,off-lineにてMATLABを用いて解析を行った.解析では,活動電位の振幅(peak-to-peak),潜時(first negative peak)およびMFCVを計測し,MFCVの値は平成10年度の結果をもとに温度補正を行った. 3.研究成果:(1)張力曲線にて明らかな減少カーブが出現する点(いわゆる"failure point")は,SOLよりもTAにて,また刺激周波数が高いほど早期に認められた.(2)誘発電位では,振幅の低下,潜時の延長およびMFCVの低下が特徴的であり,これらの変化の割合は,張力と同様SOLよりもTAにて,また刺激周波数が高いほど大きい傾向が認められた.(3)このような電位変化はfailure pointに達する以前から認められ,電気的変化は張力の減少に先行することが示された.したがって,誘発電位変化から張力の減少をあらかじめ予測できる可能性があると考えられた.来年度は,統計学的処理と研究の総括を中心に行う予定である.
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