脳卒中痙性片麻痺患者の足関節他動的運動時におけるstiffnessの測定手技を確立し、その解析と痙縮や麻痺などの評価との比較および定量化を行った。対象は慢性期脳卒中痙性片麻痺患者30名および健常者15名とした。等速性運動機器にて仰臥位安静、膝伸展位と屈曲位で、両側足関節の他動的運動を10、50、100度/秒の角速度にて施行し、抵抗トルク、角度変化、角速度変化および下腿筋群の表面筋電図を同時測定し、筋電計に入力してstiffnessの解析を行った。 知見としては、1.患者群stiffnessは膝屈曲位に比較して伸展位で有意に大きい、2.麻痺側stiffnessは非麻痺側および健常者に比較して有意に大きい、3.角速度50、100度/秒では麻痺側において下腿三頭筋群に伸張反射を認める群と認めない群とに分かれた、4.角速度10度/秒と50および100度/秒での麻痺側stiffnessの差は伸張反射出現の有無により有意差を認めなかった、5.麻痺側stiffnessとAshworth scaleおよびSIASとの間には、いずれも有意な相関関係を認めた、6.健常者群stiffnessでは角速度10度/秒・膝伸展時で0.153±0.053、患者群stiffnessでは角速度10度/秒・膝伸展時にて非麻痺側が0.157±0.037、麻痺側が0.285±0.075、また角速度50度/秒・膝伸展時では0.563±0.197、角速度100度/秒・膝伸展時では0.591±0.209(stiffness(Nm/度)はいずれも足関節背屈10度時の数値)であった。 以上より痙縮の成因については、関節組織や筋肉・結合組織や腱などの非反射性の弾性要素の関与が重要であり、痙縮をstiffnessの定量化によって捉えることが可能であると推察された。今後は痙縮の予後予測および治療効果の判定についても解明していきたい。
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