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この研究の目的は、摂食・嚥下時の舌背後方部および舌骨の動きの観察である。この領域の研究では、VF(Video Fluorography)法が主流で、最近の研究では、嚥下のメカニズムについて、いくつかの報告がある。しかしながら、VF法は、X線による被爆の可能性があるため、患者に対して、高頻度でかつ長時間の撮影は難しい。VF法に変わる画像診断法のできる超音波検査法は、無侵襲性で人体に無害である。そこで、超音波検査装置を用いて、嚥下時の矢状断面における舌背後方部の動きと舌骨の動きを同一断面状に描出し、評価できる方法を開発することにある。
最所の1年は、舌骨の動きを超音波検査装置を用いて観察し、その運藤解析を行った。その結果は、再現性があり、ある一定の軌道を描いて運動していることがわかった。また、後半では、舌背後方部の動きと舌骨が同時に描出できるエコーウインドと接触子の角度を検討したが、個人差が多く、舌背後方部と舌骨とを同時に描出できる接触子の角度は、個々で異なっていた。
2年目は、嚥下の過程の中で基準を定めるために、個々の口腔内に圧力センサを組み込んだ口蓋床装置を装着させ、舌尖を口蓋前方部に押し付けた時の圧力を観察して、そのピーク値を基準点とした時間軸を設定した。そして、健康な成人の4名を対象として、ハニー状とゼリー状の2種類の食品を用いて、それぞれの物性の違いによる嚥下時舌背後方部の動きの変化について解析を行った。結果は、2種類の食品間で、舌圧のピーク値の前後の時間に差がある傾向が認められた。また、個人差もあった。舌圧のピーク時点を基準とした舌の動きの特徴では、ハニー状の方がゼリー状に比べて舌背後方部の前方移動量が大きくなる傾向が認められた。また、舌骨の動きについては、十分な結果が得られなかった。
今後は、舌背後方部の動きの変化に舌骨の動きを関連させて、嚥下障害者に対するVF法に変わるような超音波検査装置における嚥下時の舌の移送運動の評価法を開発していく。
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