1. 片麻痺を呈した脳血管障害患者を対象として、脳波を記録しながら大脳運動野を経頭蓋的に刺激し、刺激直後の脳波変化を記録した。刺激後約600msec持続する徐波化を主体とする脳波変化がみられたが、てんかんを示す棘波や後発射などはみられなかった。刺激後の脳波を加算平均することで誘発電位が記録された。この方法により、脳血管障害患者に対しても経頭蓋磁気刺激が安全に行われることが示された。また誘発電位の解析が脳内情報伝達の研究に有用である可能性が示唆された。 2. 健常者を対象として、運動誘発電位の促通現象が、拮抗筋やそれ以外の異名筋の随意収縮時にも生じることを示した。運動誘発電位の分析により大脳皮質レベルでの様々な促通現象を検索することが可能となった。一方、標的筋自体の収縮による促通現象が片麻痺患者の健側と麻痺側にみられることは、他施設の研究者により報告される見込みである。そこで本研究では次に、異名筋の随意収縮による促通現象を片麻痺患者に応用する予定である。 3. 脳波記録中の経頭蓋磁気刺激によるアーチファクトを遮断する回路に改良を加えて新たに作成した。 4. 従来は主に視察によって行っていた波形分析を、定量的に行うためのシステムを構築した。 5. 従来よりも脳深部を刺激することが可能なコイルを購入した。刺激の強度や範囲が増大すると、安全性の検討が必要となる。上記のアーチファクト遮断回路や波形分析システムを含めて、脳波への影響を検討する実験システムを構築した。
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