1.健常者を対象として、運動誘発電位の促通現象が、拮抗筋の随意収縮時にも生じることを確認した。前年度は、下肢における検討を行ったが、その仮説を証明する結果を示すとともに、今年度は上肢における拮抗筋促通を明らかにした。すなわち、上肢でも下肢でも、拮抗筋の収縮によって運動誘発電位は増大したが、H波は抑制された。運動誘発電位の促通は針筋電図記録によっても確認された。今後、片麻痺において、拮抗筋促通が亢進しているのではないかとの仮説のもとに、運動療法に関する研究を進める予定である。 2.健常者を対象として、足関節底背屈筋の運動誘発電位の促通が、膝の屈筋あるいは伸筋の随意収縮によって生じること、またその促通が皮質レベルで生じていることを示した。すなわち、膝関節屈筋の収縮によって、前脛骨筋とヒラメ筋の運動誘発電位はともに増大したが、ヒラメ筋のH波は抑制された。大腿四頭筋の収縮によって、前脛骨筋とヒラメ筋の運動誘発電位はともに同程度に増大したが、随意的な同時収縮の程度は前脛骨筋ではヒラメ筋よりも著しかった。今後、このような異名筋の随意収縮による促通現象を片麻痺患者に応用する予定である。 3.前頭葉への経頭蓋磁気刺激が健常者の前頭葉機能、注意機能と脳波に及ぼす影響を検討し、少なくとも短期的には安全性に問題がないことが示された。前頭葉機能検査としてはWisconsin Card Sorting Test、注意機能検査としてはTrail Making Testを行った。経頭蓋磁気刺激の安全性に関する検討は、今後も慎重に進めていく予定である。
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