研究概要 |
対麻痺者の現実的な歩行機能再建のため,スライド式の仮想軸付き内側単股継手を開発,検討した.さらに,モータによる動力付与を達成するための予備的設計および試行を行った. 1. 股継手機構の軸位置乖離問題の解決と簡略化:内側単股継手には股継手と股関節との回転軸位置に乖離(平均13.1cm)があり,これが遊脚時に骨盤回旋を生み歩幅の増大を妨げ実用的速度での歩行を不可能にしていた.我々は,この乖離問題の解決のため仮想軸を有するギア式股継手を開発した.今回さらに,簡便性に優れたスライド式継手を設計,試作,検討した.対麻痺者5例において試作した仮想軸付き継手(軸位置股上60mm)と従来の内側股継手とを比較した結果,歩調,歩幅,歩行速度(従来群5.34m/min,改良群7.49m/min,p<0.01)が向上した.三次元動作解析により,仮想軸付き継手では,歩幅が増えても骨盤の回旋が増加しないことが示された(歩幅/骨盤回旋角度(cm/deg)従来:改良=1.36:1.55,p<0.01,T10対麻痺者). 2. 股継手仮想軸最適位置の決定:股上40,60,80,100mmの仮想軸付き継手を用いた対麻痺者5例での使用試験で60mmが最良という結論を得た.100mmが好まれないのは,股関節位置と回転中心が近いため容易に動きすぎてしまい立位バランスが悪くなるためと思われた. 3. 動力付きスライド股継手の設計:モータ動力化のための基本設計を行った.また,試作品による歩行評価を対麻痺者3名で行った.試作品は股継手回転速度が15度/秒程度であったため歩行速度はむしろ低下したが,歩行時の脈拍増加は有意に減少した.また上肢負担が減ったという感想が得られた.制御法についての予備的実験では,マニュアルスイッチによるオープンループ機構が良好であったが,さらに検討予定である.
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