研究概要 |
装具による対麻麻痺の歩行機能再建のため,内側系システムを開発し,その動力化,精緻化を検討した. 1.動力付きスライド股継手の検討:モータによる力源付与のための検討を行った.H1O年度に設計したモデルでは,歩行時の脈拍増加率の減少,上肢負担度の減少など一定の効果を認めたが,歩行速度はむしろ低下した.これは主に股継手回転速度が低値(15度/秒)であったことによると考えられたため,ギア比の再検討を行い,50度/秒まで向上させた.T10対麻痺者1例の平地歩行実験にて,動力なし歩行と比較した.動力なしと動力ありの歩行(10m歩行3回平均値)はそれぞれ,心拍数変化(拍/分):34,11,歩幅(cm):21,14,速度(m/分):18,15となり,統計的には有意な心拍数変化の減少を認め,速度の有意差はなかった.従って,動力化は,対麻痺歩行時の上肢負担軽減に有力な方法であると結論できた. 2.制御法の検討:1)マニュアルスイッチ(左右別,on持続時駆動),2)マニュアルスイッチ(左右別,on-off),3)マニュアルスイッチ(左右別,on駆動,持続時間一定),4)自動歩行(開始-終了のみスイッチ)の4方法をT10対麻痺者1例において比較した.2),4)は受け入れられず,1)が好まれた.いずれも開回路制御であり,披検者の意志反映が単純である点に問題を残した.また,杖を持ちながら手指にてスイッチ操作を行う点で,煩雑性,手指の疲労が障碍になった. 3.股継手の精緻化:股継手の自由度を増やすため,内外旋機構の追加を検討した.スライド股継手の長下肢装具取り付け部分に左右それぞれ5度の内外旋を詐容するヒンジを付加した.健常者1例およびT10対麻痺者1例において歩行実験では立脚期の足部内外旋の減少を認めた.また.立位安定性は変わらず,回旋歩行は容易になった.
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