身体障害者の水泳競技、特に脊髄損傷者(SCI群)や脳性麻痺者(CP群)において、障害や障害度がどのように水泳能力に影響するかについて三次元動作解析装置を用いて運動学的に検討すると共に障害区分法の妥当性について考察した。クロール動作において、SCI群特に胸髄損傷者では麻痺による骨盤部・下肢のコントロール機能の低下のため股・膝関節の屈曲角度が大きい群と小さい群の2群に分かれた。また、上部体幹に比べ骨盤部の回旋角度が大きな値を示した。クラス分け評価において、体幹の回旋運動、特に上部体幹-下部体幹の動きを観察することが重要であることがわかった。 一方、平泳ぎでは1ストロークの動作をSCI群・CP群はpull相とrecovery相の2相に、コントロール群はpull相、recovery相、kick相の3相に分類できた。SCI群・CP群ではrecovery相での上肢運動がより水面下で行われるため水との抵抗が増し、推進速度の低下につながっていた。また、最大体幹迎え角時の股関節はcontrol群・CP群が伸展位を示したのに対して、SCI群は屈曲位を示した。CP群では下肢を推進の妨げにならないよう随意的に伸展位に保持するため、余り角度変化が認められないケースや上肢のpull動作に伴って生じる下肢の屈曲パターンの出現により、recovery相で伸展しpull相で屈曲するケースが認められた。一方、SCI群では、逆の傾向を示した。平泳ぎ競技ではキック動作のないSCI群およびCP群を比較した場合、CP群の方が有利であることが示唆された。自由形では同一クラスでおるSCI・CPの選手を、平泳ぎのクラスではSCIの選手をCPの選手よりも、より重度のクラスに分類しているIPCのクラス分けシステムの妥当性を支持する結果となった。
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