研究概要 |
本研究は,ウシの尿中NAG活性値ならびにアイソザイム測定を腎疾患診断マーカーとして確立する目的で実施したものであり,以下のような成果が得られた.(1)健康牛の尿について4MU-NAG法,MCP-NAG法,PNP-NAG法を用いてNAGを測定し相関を調べた結果,各測定値間には有為な相関性が認められた.またウシの性差や年齢差による比較では,尿中NAG濃度をNAG指数であらわした場合には有意差はないことが判明した.(2)セルロースアセテート膜電気泳動法とDEAEセファロースミニカラム法によりアイソザイムパターンを検討して,健康牛のパターンはA,B分画は約8:2であり、この値はヒトやマウスの値と類似していた.(3)多数の自然発症例を収集して尿中NAG指数とアイソザイムパターンを分析した.その結果,尿中NAG指数は健康牛と比較して明らかに高値を示し,アイソザイムパターンではB分画の増加(A:B=6.5:3.5)が明らかであり,このパターンはヒトや実験動物で報告されている尿細管障害パターンと同様であった.次に症例の腎臓の病理組織学的変化と,NAGアイソザイムパターンを比較検討した.その結果腎臓では明らかな尿細管病変像が観察されており,尿中NAG指数とアイソザイムパターンは賢疾患診断マーカーに成り得ることが示された.(4)ウシ腎症モデルの作成:重クロム酸カリウムによる賢症モデルではNAG指数は最高で62U/gと高値を示しB分画の増加が観察され,尿細管病変と良好に相関していた.腎ホモジネート中のアイソザイムパターン分析も同様な変化を示した. 以上のことから,尿中NAG指数とアイソザイム分析はウシの腎疾患診断マーカーとして有効であることが証明された.
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