研究概要 |
ビーグル犬3頭にE. coli由来リポポリサッカライド(LPS)を50 μg/kg筋注し、急性相反応を誘発した。投与後28時間で殺処分して肝臓を摘出し、マイクロゾーム中のチトクロムP450(CYP)2C量をWestern blottingによって評価した。ぞの結果、急性相反応誘発群では無処置群と比較して50%程度低かった。in vitroの酵素動態解析で得られたKm値はLPS投与で影響されず、Vmaxだけが低下することと今回得られた結果を総合すると,急性相反応時のCYP活性低下は酵素量の低下に起因することが示唆されるので、急性相反応時にはCYP酵素の生成量が抑制されるものと推察された。 ビーグル犬6頭を用い、テオフィリンおよびニフェジピンの静注後の薬物動態を急性相反応誘発前と誘発後に調べ、両者を比較することによってこれら薬物の体内動態に対する急性相反応の影響を検討した。(1)いずれの薬物も分布容積には影響は認められなかったが、全身クリアランス、消失半減期はLPS処置によって有意に低下した。(2)CYP1Aによって主に代謝されて消失するテオフィリンでは、全身クリアランスは40 %程度、CYP3Aによって主に代謝されて消失するニフェジピンでは30 %程度低下したが、これらの低下率はCYP1AのVmaxに認められた低下率(26 %)およびCYP3AのVmaxに認められた低下準(48 %)にほぼ匹敵した。(3)in vitroで得られた活性の低下だけを考慮し、血漿中濃度推移の理論値を算出した結果、いずれの薬物の場合にも実測値とよく一致した。したがって、テオフィリンとニフェジピンの体内動態におよぼす急性相反応の影響は、in vitroのCYP活性の結果から予測が可能であることが示された。
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