研究概要 |
犬のアトピー性皮膚炎は、ヒトと同じく様々な環境アレルゲンに対してIgE抗体を作りやすい体質に発症する皮膚炎である。ヒトのアトピー性皮膚炎は難治性の疾患であり、その原因および治療に関してはまだ不明の点が多い。われわれは犬のアトピー性皮膚炎がヒトの治療モデルになりうるかどうかを環境疫学的、動物臨床的およびサイトカイン発現を踏まえた遺伝的要因について詳細に調査し、知見をえたので報告する。環境疫学的には全国の獣医病院186件にアンケート調査を行い、2,164症例を回収した。その結果、日本における好発犬種は柴犬およびシーズーであり、イヌのアトピーの主要アレルゲンは室内ダニ、日本スギおよびイネ科の草の花粉であった。これらの事実は犬のアトピーにおいても遺伝的な要因のほかに環境要因が関与していることが明らかになった。また、犬のアトピー性皮膚炎の末梢単核球におけるサイトカインの産生を正常犬のそれとcompetitive RT-PCR法を用いて比較した。アトピー犬ではTh1サイトカインであるgamma-interferonの産生は低下していたが、Th2サイトカインであるIL-4の産生には変化がなかった。したがって、犬のアトピー性皮膚炎の末梢血リンパ球では、ヒトと同様にサイトカイン発現がTh-2型を示していた。このことから、犬のアトピー性皮膚炎はヒトのそれの病態を環境をも含めて反映し、マウスモデルではなしえないヒトの治療モデルになるうるものと考えられた。
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