研究概要 |
Toxoplasma,NeosporaあるいはEimeriaはコクシジウム亜鋼に分類される原虫であり、宿主細胞に感染する際に、前端にあるコーノイドとよばれるドリル様の器官を用いて穴を開けて侵入する特徴がある。コクシジウムは再感染時に強い抵抗性を示すことから、免疫防御機構の解明が進められてきた。申請者は鶏のコクシジウムの一種であるEimeria acervulinaに対するモノクローナル抗体(MAB)の産生を目指して実験を繰り返し、その結果、コーノイドに対するMABを作成した。さらに、このMABは全種類の鶏コクシジウムの侵入型スポロゾイトToxoplasma gondiiやNeospora caninumの侵入型タキゾイトのコーイドを認識することが確認された。最近、培養細胞を用いて侵入抑制試験を行ったところ、このMABがE.acervulinaスポロゾイトの細胞侵入を抑制することが判明した。以上の経緯より、Toxoplasma,NeosporaあるいはEimeriaに共通抗原性を持つコーノイド蛋白を遺伝子工学的手法を用いて合成し、鶏コクシジウムを感染モデルとしてその効果を確認する。 平成10年度には、現在、世界各国で問題になっているコクシジウム亜鋼の原虫であるCryptosporidiumに焦点をあて、コクシジウム亜鋼に対する鶏型のモノクローナル抗体を用いて、Cryptosporidiumとの共通抗原性を確認する。平成11年度において、人獣共通感染症として、現在問題となっているC.parvumを中心に共通抗原性の確認および、共通抗原を用いたワクチンの可能性について検討した。 6種の鶏型モノクローナル抗体、6D-12-G10、8E-1、HE-4、8D-2、5D-11、8C-3を用いてCryptosporidium murisに対する共通抗原性を間接免疫蛍光染色法とウエスタンブロッティング法により解析した。蛍光顕微鏡による間接免疫蛍光染色では、C.murisスポロゾイトは6D-12-G10モノクローナル抗体に陽性反応を示した。C.muris可溶化抗原のウエスタンブロッティング法による解析において、6D-12-G10は47.9kDa、5D-11は154.9kDaのタンパク抗原を認識していることが判明した。また、C.paruvumに対する共通抗原性の解析において、蛍光顕微鏡による間接免疫蛍光染色では、C.parvumスポロゾイトは6D-12-G10および、HE-4モノクローナル抗体に陽性反応を示した。C.parvum可溶化抗原のウエスタンブロッティングによる解析において、6D-12-G10がC.murisと同様に47.9kDaのタンパク抗原を認識していることが判明した。これらの結果により、本鶏型モノローナル抗体はApicomplexanに存在する共通のエピトープを認識している可能性が示唆された。本研究を継続し、Toxoplasma,Neospora,EimeriaおよびCryptosporidium等の人獣共通感染症を同時に予防可能なワクチン抗原の開発の一助となるような研究を継続する。
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