本研究の目的は、腎機能障害の促進因子の一つとしてとして考えられている高血圧に関して、腎障害時のレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系(以下RAA系)が血圧にどのような影響を及ぼし、腎機能障害の進行とどのように関連するのかを実験的腎性高血圧モデルならびに慢性腎不全症例において明らかにするものである。本研究は慢性実験テレメトリー自動計測システムDATAQUEST)を用い正常な犬および猫の血圧の変動を長期間にわたり観察、従来不明であった犬、猫の正常血圧、血圧の日内変動、生活リズムと血圧の関係についてコントロールとなる基礎実験データの集積を行った。基礎実験に引き続き、実験的慢性腎不全モデル(犬、猫)を作成し、慢性腎不全が進行する過程における血圧変動とRAA系の関連について検討を行い、明らかに犬や猫においても腎機能障害により血圧が上昇し、腎性高血圧を発現することが確認された。さらに実験的慢性腎不全モデル(犬、猫)を作成し、慢性腎不全が進行する過程における血圧変動とRAA系の関連について検討を行った結果、腎機能障害時に発現する高血圧はRAA系の亢進と明らかに相関することが判明した。腎性高血圧の発現機序のひとつとしてRAA系が関与していること想定されたことから、腎性高血圧を発現した実験的慢性腎不全モデルに対してACE阻害薬を投与し、血圧変動の変化について検討した結果、明らかにACE阻害薬の投与により血圧の低下が見られた。本研究の結果から、腎機能障害時における高血圧の発症にはRAA系が関与し、さらに高血圧そのものが腎糸球体の硬化を促進する可能性が示唆され、ACE阻害薬によりその悪循環を断ち切り、高血圧を是正することが腎糸球体硬化の進行を遅延させ、最終的には腎機能障害の進行を抑制できることが予想され、これまで内科的治療の限界とされている慢性の腎機能障害とRAA系を介した高血圧との関係について明らかにすることができた。
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