研究概要 |
本年度の研究は、イスラム哲学の基礎的語彙・概念、特に「存在」に関わる語彙・概念の形成過程に関する調査を行った。備品費で、アル・キンディー、アル・ファーラービー、イブン・シーナーの基本的テキスト及び最近の研究書・論文の収集13世紀の西洋中世哲学における受容(特にガンのヘンリクス)のテキスト・研究書の収集を行い、これらの資料に基づいて、アリストテレス存在論の基礎概念が、シリア語、ヘブライ語、アラビア語、ペルシア語などへの翻訳されていった過程、および最終的にラテン語に翻訳され、西洋に流入していった過程を、原典に基づいて実証的に跡づける作業を行った。特に本年度はプロティノスなど新プラトン主義がイスラム哲学に受容される際の過程、13世紀後半にアヴィケンナがラテン語化される場合の過程の研究に重点を置いた。これらの研究の結果、アリストテレスの形而上学とプロティノスの存在論がイスラム哲学において接合される過程が、錯雑とした翻訳の過程の内に裏付けられることはほぼ確認できた。この作業は、膨大な作業を必要とするため、本学内において、研究会を開催し、基本テキストの読解を進めるとともに、他大学・研究所における資料収集、学外の関連分野の研究者との情報交換を行いながら、成果を蓄積中である。萌芽的な領域なので、本年度は具体的な成果を発表するまでには至っていないが、次年度は最終年度に当たり、中間報告的な形であるが、発表する予定である。最終的な成果に至るには、なお4,5年を要するため、継続研究の形態を考案中である。
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