本研究は、認知者の違いや社会的状況の違いにより、社会的状況の認知次元がどのような特徴を示すのかを検討することを目的とする。そのために、認知次元の抽出を認知者ごとに、あるいは社会的状況ごとに行うという方法をとる。この方法によって認知者個々人および様々な社会的状況について、特徴的な認知次元が詳細に検討可能となる。また、このような個別の検討にとどまらず、全体の中で個々人の認知次元がどのように位置づけられるのか、認知次元の様式から社会的状況がどのように分類されるのかも検討する。 平成10年度:質問紙による社会的状況の収集を出発点とした(第1次調査)。ここでは、日常の社会的状況について被調査者に想起してもらい、自由に記述してもらうという方法をとった。提出された社会的状況は「物理的環境・そこにいる他者・そこでなされた行動」の3要因から分類し、第2次調査で刺激となる社会的状況の資料源とした。さらに、被調査者に共通の特性による評定も行ってもらい、この資料をもとにした分析も行った。すなわち、社会的状況と被調査者をコミにしたものをサンプルとし、特性を変数とした因子分析である。算出された因子得点の絶対値の大小から、社会的状況を分類し、その特徴を探索的に検討した。この結果、認知次元の構成に強い影響を与える社会的状況の要因として、他者の要因(親しみやすい他者がいるか否か)、行為の要因(非日常的な行為か否か、競争的行為か否か)が認められた。第2次調査では、特徴的な認知次元の抽出を目的に、特定の社会的状況の特性評定を行ってもらった。分析として社会的状況ごとの認知次元抽出を行っており、仮説検証的に認知次元の特徴を検討する予定である。
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