今年度の研究においては、次のようにまとめられる研究実績が得られた。 (1) プログラム開発のための研究資料の入手と整理 教育プログラムを開発するために、攻撃性の発達と顕在化過程について実証的研究資料を得ることができた。この資料により、攻撃性を低減させるための目標が階層的に構成された。次に、その目標を達成するための方法論を構築するために、心理学と保健学の分野で、基礎・治療理論に関する資料を集め、心理学においては、条件づけと強化理論、社会的認知理論、認知行動療法など、保健学では、ヘルス・ビリーフ・モデルやプリシード・プロシードモデルなどから、多様な理論的基盤を得ることができた。 (2) プログラムの作成 プログラムの方法を、4つのフレームと10のモジュールで構成した。 まずフレーム1(グループ・ワーク)としては、小グループ活動とロール・プレイのモジュールを攻撃性と拮抗するソーシャル・スキルの達成のために設定し、フレーム2(省察ワーク)では、児童自身による省察とそれに対するコメント指導モジュール、強化モジュール、リラクセーションモジュールを、悪意意図帰属の改善を主たる目的として設定した。さらにフレーム3(リレーション・説明ワーク)においては、プログラムの開始時に、動機づけを高めるための、エクササイズ活動と知識の伝達のモジュールと望ましいスキルの達成を促す掲示用プロンプトのモジュール、そして、フレーム4(情報ワーク)には、親への連絡指導のモジュールが設定された。 (3) プログラムの評価方法の確立と実践 プログラムに必要な尺度の作成に続き、プログラムのうち、もっとも大きなモジュールとなる小グループ活動、ロール・プレイングを中心に小学校高学年にプログラムを予備的に実施し、統制クラスとの比較から、プログラム効果とその修正点を明らかにした。 これより、来年度、全プログラムを全面実施し、その効果を検討する準備ができた。
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