本研究は、1)ネガティブな学習動機の説明理論は学習性無力感に限らないのではないか。2)子どもが、いわゆる内発的動機を持ってコンピテントで自発性に富んで生まれたとしても、それは形成・発達する必要があり、その歪みないし失敗はネガティブなモティベーションとして捉えられる。従って、3)脱意欲、ないし、ネガティブな学習動機を自尊心などの自己観や気質・性格との関連を分析し、学習性無力感以外の脱意欲の存在と、その脱意欲の性質を明らかにしたい。と考えて研究を開始した(予備研究報告・教心39回総会発表)。 1.本調査と分析の試み 脱モティベーション尺度を新たに作成し、自尊心尺度、人と環境との関わり方の認知(Hettema&Kenrick)、性格(気質)との関係で分析した。その結果、脱モティベーションには「否定的感情」「競争回避」「環境的抑制」「学習性無力感」「目標欠如」があることを確認した(教心40回総会発表)。 2.ネガティブな動機の内的構造と尺度特性 ネガティブな動機とポジティブな動機を同時に調査することを目的として、新たに、意欲・脱意欲尺度を作成し、因子分析によって尺度の内的構造を分析した。その結果、仮に、「学習性自己否定感」「目標欠如」「他者との比較による効力感」「自律的向上心」「社会的チャンスの存在」「プラス体験」「外的障害(環境的抑制因)の存在」の7因子が抽出された(教心41回総会発表・性格心8回大会発表)。分析方法が今後の課題となった。 3.意欲脱意欲尺度の尺度特性・妥当性の検討 研究最終年度に当たり、意欲脱意欲尺度の標準化に向けて、これまでのデータを再分析し、1)高次因子分析による内的構造の再分析、2)尺度の信頼性の分析(α係数)、3)尺度の小・中・高・大学生の意欲脱意欲の発達的分析を行った。現在、論文投稿準備中である。
|