本研究はわが国における犯罪抑止の環境条件を明らかにすることを目的とした。そのため、本年度では次年度での本調査で用いる環境指標(変数)と犯罪指標を検討するための予備調査を行った。予備調査は次の二つの調査からなる。一つは居住環境の指標の検討を目的とした質問紙調査である。具体的には環境犯罪学などが問題としてきた住居や地域の領域性・監視性・無秩序性などの指標と、犯罪抑止に関連すると思われる他の住環境の指標について、それらと各種犯罪の実際の発生件数や居住者の犯罪への不安との関連を分析することで次年度での本調査で用いる指標を検討する。もう一つは、犯罪を環境との関連性に応じて分類する必要があることから、警察庁などの各種統計資料の分析により、犯罪をその発生場所に基づいて分類することであった。 まず、住居構造や近隣地域特性に関する質問紙調査では、名古屋市内の古くからの住宅地と新興住宅地の二つの地域を選定し、それぞれさらに集合住宅の多い地域と一戸建て住宅の多い地域を選定した。回答者は30代から50代の女性に限走した。これは犯罪被害への不安では性と年齢が関与することが知られているため、対象を限定したことによる。回答者については900名を住民台帳から無作為に抽出した。まず、葉書で調査への依頼をおこない、その2週間後に質問紙を郵送する方法をとった。回答も、匿名性を維持するために、郵送によった。葉書による依頼や質問紙配布の段階での回答拒否や転居等による不在などの事情から、結果的に配布数は882部となった。回答は530部で回収率は60.1%であった。現在その結果を分析している段階である。 統計指標による犯罪の分析は、犯罪統計書(警察庁)をもとにクラスター分析をおこない、犯罪発生場所に基づく犯罪種別の分類をおこなった。その結果、年度により若干の相違があるものの、大きく4〜5のグループに分かれ、なかでも強姦が他の犯罪と異なることが明らかとなった。これについても現在、グループ毎の発生場所の特徴を分析中である。
|