2年度である平成11年度では、初年度におこなった高齢者の家族・親族関係に対する調査研究の国内外の文献の収集・検討を基礎的研究(拙著『高齢期家族の社会学』世界思想社を参照)として、従来の家族社会学にみられた「家族のなかに含まれた高齢者」ではなくて「個としての高齢者による家族の再構築」という視点から、名古屋市近郊にある高蔵寺ニュータウン「愛知県春日井市)において調査研究を開始した。 調査対象者は、定年退職や子の独立などによる家族再構築の年代にあたる50歳から70歳までの中高年者である。調査方法としては、生活史のなかで家族・親族コミュニケーションの形成と変化を探るために、面接調査を用いている。おもに対象者の選定にあたっては、高齢化の進行する高蔵寺ニュータウンを中心に春日井市においてコミュニティ活動を活発におこなっている住民と接触するなかで、調査への協力者を得ている。まだ少数ではあるが、面接調査をおこなっていくなかで、ニュータウンでの地域生活の変動、家屋構造などの生活空間のあり方、各家族員の生活時間の変化、さまざまなメディアへの接触状況などが家族・親族コミュニケーションに大きな影響をあたえていることが示唆されてきている。 3年度は、さらに面接調査を中心にして研究を進めていき、そこから明らかになった知見について、コミュニケーション論やネットワーク論だけでなくライフコース論や都市社会学なども参考にしながら、分析・考察をおこなう予定である。
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