イギリスのイスラーム系、中国系居住者は、それぞれ150万人、50万人であり、日本とは比べものにならない。イギリスで彼らは、それぞれ独自のコミュニティを作り相互に交流もなく隔離された社会を形成しているが、日本はどうであろう。 現在、日本のイスラーム系、中国系居住者は、それぞれ5万人(推計)、25万人(平成9年末)である。日本とイギリスの大きな違いは、彼らの数がまだ少ないところから極端な集住化はみられないこと、教育界でも大きな問題にはなっていないことである。ただ多文化教育が世界的な動きとなっているなかで、保育園などで日本にもようやくイスラーム問題がみえ始め、トイレにウォーター・ポットを置いて欲しいとか、宗教上の戒律で食べられないものがあることを理解して欲しい、さらに皆と同じことをしない自由も認めて欲しいなどの要求が高まりつつある。 中国系では、現在都立高校が引き受けているが、日本語を十分に話せないため途中でドロップ・アウトするなど、大きな問題を提起している。彼らは、戦後処理の一環として国が支援しているものの、国費帰国者以外に自費帰国者も多く、この人々へのケアは何もなされていないため子どもたちへの支援も含め今後の重要な課題である。また、中国帰国生の将来の社会参加という角度からすると、進路保障をいかに実現していくかということになるが、それには試験にルビをふったり時間を延長するだけで日本の生徒と同じ問題を解くのではなく、内容を変えるとか、試験だけで評価するシステムに代わるものを開発するなどの処置が重要になるだろう。また、日本の地域社会も多文化状況が進行しているが、中国人やベトナム難民以外の生徒には何の国家的ケアもなされておらず、大きな問題を提起している。次年度は、この問題も含めて早急に解決すべき課題を明かにしたい。
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