本研究プロジェクトの目的は、日本社会におけるボランティア活動に対する文化的阻害要因を明らかにすることにある。具体的には、(1)大学生に対する面接調査を通じて、ボランティアに対する否定的イメージの全体像を把握すること、(2)そうした質的調査にもとづき、ボランティアを志向する若者と忌避する若者の差がいかなる社会的要因に規定されているかを把握すること、そのうえで、(3)日本における若者のボランティア活動に対する動機形成の特徴を文化社会学的に捉えていくことを目指している。 今年度は、過日提出した研究計画に則して、まず第1に、なんらかボランティア体験を有する学生を20名抽出し、各人2回にわたって面接調査を行った。調査内容としては、(1)ボランティア(活動と活動主体)に対するイメージ、(2)自己イメージ・他者イメージ、(3)「大学という場」に対するイメージ、(4)社会に対するイメージ、および、それらの変遷について、(5)ボランティアキャリアの詳細とそれに伴い彼らが直面した問題におけるパーソナルな側面と社会的な側面の調査などである。また第2に、これに加え、ボランティアに否定的イメージを持つ学生20名を抽出し、ほぼ同様のイメージ調査とともに、ボランティアに対してネガティブな印象を与えた経験を生活史のなかから深くたどる面接調査を行った。 これらの調査から、ボランティア=自己発展と認識する少数の活発なボランティア活動家がいる一方、多くの活動家やまた被活動家は、「ボランティア活動=偽善的」という意識に強く囚われており、そうした意識に悩まされるていることが明らかになりつつある。今後、このような質的調査を継続するとともに、数量的調査を設計し、日本の若者におけるボランティア活動に対する動機形成の理論仮説を構築していきたい。
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