米国においそ産業カウンセリングの役割は、80年代から健康増進にウエイトが置かれて来ているが、日本でも産業カウンセリングに健康増進のボリシーを入れることにより、今後、急速に発展するのではないかと考える。そのために日本の産業カウンセラーの行う実践内容にも、健康増進にかかわる内容の確立が急がれている。今回、試みたのは、介入方法の検討と妥当性である。スクーニングの項目はこの種の検査の場合、従来は医学的・心理学的な項目などからなる質問調査が多いが、今回は産業カウンセリングの立場からのアプローチであるので、仕事に関する心情をアセスメントすることに研究の視点をおいて、仕事感、自己評価、人間関係、人事・労務、職業生活と家庭生活の両立、余暇生活、情緒からなる独自に作成した産業社会学的な調査を使用した。この結果から、心配や悩みを持つ人間は、これらの仕事に関した表層の意識に必ず映し出され、この背後に意識・無意識の悩みが抑圧されていると考えられた。逆に考えると深層の悩みのシグナルがこれらの仕事に関する意識に表明される事となる。このシグナルの仕事遂行上のエモーショナルな障害をサポートすることから始まって、次第に深層の悩みを対象とするカウンセリング方法は、自らカウンセリングを受ける動機づけの低い精神構造を持つ日本人には有効であると考えられた。このことからもっと日本人にあった受身のカウンセリングの受け方を研究する必要があると考える。さらに、今後適切な介入を目的とした多くのスクリーニング調査の開発を待たねばならない。このような、1.スクリーニング調査の実施 2.介入 3.カウンセリングによる3段階のアプローチは、潜在的にカウンセリングの必要な人を発掘し、そのクライエントの健康増進に寄与する事は、今後の医療費の高騰を防ぐ上でも大切なウエルネスポリシーであると言える。個人の悩みや心配を吐露してもらい、自己洞察を深め、自己解決の道に気づいてもらう中で、至高的境地で自己実現を実感する過程こそ健康増進のもっとも効果的な方策であると考えられ、疾病予防にも深く関係していると推定出来た。
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