日本では、キャリア・カウンセリングの役割と効用が曖昧である。米国のように職業移動の激しいお国柄とは対照的に終身雇用制度や集団主義的な家族的経営で守られ、キャリア・カウンセリングの育成される土壌(文化風土)が乏しかった。しかし、今後はグロ-バル化が進む中で、企業組織の人的資源管理の仕方が問われることになり、キャリア・カウンセリングが、有効な方法として積極的に活用されることになるだろうと思われる。 今年度の研究計画では、キャリア・ストレスに研究テ-マを求めたが、産業カウンセリングでは、その予防として、むしろキャリア・ストレスが起こらないように、積極的に能力開発を行うことが、望ましいと考える。キャリア発達の機序を明確にし、それをハ-ドルと命名して、キャリア・ストレスはこのキャリア・ハ-ドルが越えられていれば、生じないかあるいは軽減されると解釈した。 さらに、エドガ-・H・シャインの「キャリア・ダイナミックスの理論」から「キャリア・アップのためのキャリア・ハ-ドル自己評定票」を独自に作成して、従業員に積極的にキャリアの自己管理を促すようにした。この自己アセスメントの結果により、産業カウンセリングを受ける必要性のある方は、「自発的に相談室に来所されたし」の指示が明記されている。この報告書の提出後、早急に調査に入りたいと考えている。その調査結果は今年度の産業カウンセリング学会に報告する予定である。
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