中間年にあたる平成11年度はまず、昨年度に引き続き、国内外の「女中」に関する文献の収集・整理をおこなった。本年度は、雑誌や新聞、家政書のみならず、女中の教育に力を入れていた女性団体、とくに愛国婦人会の動向に関する文献を集め、女中が消えゆくプロセスを追うため、カバーする時代も1960年代までに広げることにした。 こうした作業を通して、(1)愛国婦人会をはじめとする女性団体が、大正から昭和にかけて、組織ぐるみで女中の養成・斡旋に力を入れようとしていたこと、(2)戦後も高度成長期の初めごろまでは、住み込み女中を置く家庭が少なくなかったこと、(3)高度成長期を境にして家庭から女中が消えていったことなどが明らかになった。これらの成果は、研究代表者の単著として、「戦前期の『婦人之友』誌にみる女中像の展開――〈お手伝〉の登場をめぐって」(日本生活学会『生活学論叢』第4号、1999年9月)、「〈女中〉イメージの変遷」(岩波書店『近代日本文化論――第8巻 女の文化』2000年2月刊)、「近代日本における〈主婦〉イメージの形成」((財)兵庫県長寿社会研究機構家庭問題研究所『家族研究』第3巻、2000年3月発行予定)に、論文としてまとめている。 本年度はまた、女中として働いた経験のある女性、女中を雇っていた家庭の女性(明治・大正・昭和ひとけた生まれ)数名にも、面接調査をおこなった。彼女たちのライフヒストリーをくわしく聴き取るなかで、住み込み女中が、たんなる口減らしや小遣い稼ぎの労働ではなく、「行儀見習い」的な性格を持っていたことが、あらためて確認された。
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