研究概要 |
本年度の研究成果は,l,わが国の学生サービス(SPS,厚生補導)の歴史分析,2,わが国および諸外国の現状に関する資料収集,3,これまでの研究成果の発表,の3つに大きく分けられる。 1に関しては,SPSの導入当時の様子や背景を,教育法制史,新聞などの記録をはじめ,米国で出版されていたわが国におけるSPS導入に関する報告書などをもとに,調査分析した。その結果,SPSの理念的背景,わが国に同時に移入された他の教育思想との関連などが明らかになってきた。 2に関しては,米国とドイツの主要大学の,インターネット上のURLをもとに,資料を収集した。その結果,米国の大学における現在の学生サービスの現状や高等教育の中での位置付けが明らかになりつつあり,わが国における学生サービスの機能の高度な実現のためには,高等教育の改革全体と関連付けながら考えていく必要性が示唆された。また,高等教育改革自体に関しても,現代的な要請の中では,正課外の学生指導を大学の教育目的の中に理念的・制度的に位置付ける必要があるとの知見が得られた。 3に関しては,全国学生相談研究会議,全国大学メンタルヘルス研究会,学内の厚生補導担当教官研究会などで,発表する機会を得た。前者ふたつにおいては,本研究の高等教育論から学生サービスをとらえるという新しい視点,学生相談を高等教育の機能の中で意義付ける視点などが,良好な反応を得た。また,最後者においては,大学における学生サービスの実現において,学生部や学内教官との協力へ向けての知見を得ることができた。 今年度は,研究費の使用が実際に可能となったのは1月以降であり,それ以前の研究は,現有機器や個人研究費に頼らざるをえなかった。1月以降は,来年度研究へ向けての,データベース作成のための機器の準備,ネットワーク環境の整備などに力を注いだ。
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