本研究は、在日米軍基地内で活動しているさまざまな活字メディア(新聞や雑誌、催し物のお知らせや広報用のパンフ、ポスター)の内容や活動に焦点を当てて、米軍関係者(家族を含む)の日常世界を人類学的な視点から明らかにすることを目的とする。米軍については基地周辺住民や軍事関係の調査はなされてきたが、日本で生活し、独自のメディアを保持してきたマイノリティとして米軍関係者をとらえる視点はなかった。従来の人類学的調査が困難であることを考慮して、とくに活字メディアに注目する。日本には主要な基地(キャンプ)が8カ所にあり、およそ11万人が常時基地内部や周辺に滞在している。基地にはボーリング場やスポーツジム、映画館、ファーストフード店はもちろんのこと、小中学校などの教育施設も完備している。各基地は独立した、一種の軍事・生活共同体を形成しているといえる。この共同体を支えるのはヒエラルキカルな指揮系統とそれを横断する基地内メディアである。後者の代表が基地の顔でもある基地新聞で、そこには事件・ニュースだけでなく、ひとの紹介、イベント、個人広告などのコーナーがある。これに加えて多くの部局が小冊子を発行している。本研究は、これらの活字メディア(その活動、役割、報道視点、記事内容など)を分析することで基地の日常的な生活や、周辺住民との関係を明らかにする。初年度は横須賀、横田、座間、岩国、佐世保、沖縄を訪問して、基地の新聞や小冊子の収集を試み、その記事分析を行った。ほかに催し物のビラやツアーガイドなども分析の対象とした。さらに基地メディアに従事する人にインタビューを試みた。ただし、予定していたデータベース化は進んでいない。
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