本研究は、在日米軍基地内で活動しているさまざまな活字メディア(新聞や雑誌、催し物のお知らせや広報用のパンフ、ポスター)の内容や活動に焦点を当てて、米軍関係者(家族を含む)の日常世界を人類学的な視点から明らかにすることを目的とする。本研究は、従来の参与観察による人類学的調査が困難なことを予測して、主としてこれらの活字メディアを分析することで基地の日常的な生活や、周辺住民との関係を明らかにしようとした。すでに調査を実施している横須賀の海軍基地の他にあと佐世保と横田を中心に調査を行った。また米軍についての関連文献(博士論文を含む)を継続して補充・購入した。 活字メディアは大きく分けて定期的に公刊される週間新聞および日刊新聞と不定期の催し物に関するチラシ類に分かれる。雑誌あるいはパンフレットは定期的なものとそうでないものとにわかれる。日刊新聞は国防省が発刊している『星条旗新聞太平洋版』である。週間新聞は基地毎に公刊されていて、基地メディアの顔といえる。たとえば横須賀ならSeaHawkが基地の新聞である。ここには軍にとっての最重要なニュースや公開可能な軍事ニュースが一面を占める。しかし、それ以外のページはどちらかという基地の日常に関係した情報誌の性格が強い。広告欄には、宗教のサークルや英語教師の募集など、軍隊とは関係のない広告も目立つ。週間の新聞をはじめかなりの印刷物の収集につとめたが、統計処理・分析にはいたらなかった。その詳細は適宜学会で口答発表し、また大学紀要や学術雑誌に投稿する予定である。
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