本年度は、下記の点について研究を進めた。 I 過去の調査資料の整理と分類 研究代表者自身によるものをはじめ、京阪式アクセントに関する調査資料を収集し、アクセント型にゆれの見られる語をリストアップした。その中で、共通語アクセントとの接触に起因すると思われるものをさらにリストアップした。ゆれの見られない語で、共通語アクセントとは型が異なり、なおかつ日常的に使用される、いわば基盤的な語についてリストを作成した。 II 大学生による使い分けの実態調査(予備調査) 上記Iの資料に基づいて、京阪式アクセント地域出身の大学生2人を対象に、方言を意識した場合の発話と、共通語を意識した場合の発話における使い分けの状況を予備調査として実施した。これは、調査語彙リスト作成のための調査で、この結果を踏まえて本調査票を作成する。 III 1970年代生まれ話者のアクセント記述 加古川市西神吉町出身の1970年代生まれの話者について1〜2拍体言のアクセントを調査した。近畿中央部の同年代話者同様、2拍名詞4・5類の区別は失われ、一部には共通語アクセント同型になっているものも見られた。 本年度は、Iに予想外の時間を費やしてしまったために、本調査票作成の準備段階までで研究を終えた。次年度は、その資料を基に、地域・年層別の調査を実施し、「京阪式アクセントと共通語アクセントの切替え」の実態調査と分析を行なう。
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