研究概要 |
本年度は主に,孝子説話の近世における代表的なものである「二十四孝」について関連資材を収集し、内容及び絵図についての比較検討を行った。以下、三つの方面に分けて報告する。 1.室町写本「新刊全相二十四孝詩選」(慶應義塾大学斯道文庫蔵),江戸刊本「分類二十四章孝行録註解」(龍谷大学図書館蔵)など国内公的期間の所蔵する資料,計十三点をマイクロフィルム等で収集し、その系統を研究し、主に日本における二十四孝受容史の一端を明らかにし,今後の研究の基礎とした。 2.「文物(文物出版社・北京)等に掲載された中国宋之代の二十四孝発掘資料を収集し、その人物構成、絵図の構成などを系統的に比較検討し、宋之代に流行した二十四孝の性格を明らかにした。また元曲等文学資料との比較をも行なった。 3.平成11年2月22日より25日まで韓国ソウル大学に出張し、所蔵資料を調査すると共に,高麗本「孝行録」の流布と影響について,ソウル大学中国文学科金学主教授をはじめとする韓国側研究者と意見交換を行い,研究成果についての批評を受け、かつ将来の交流についても話し合った。以上の活動によって、宋之代の中国,及び同時期の朝鮮,日本において流行した二十四孝が、現行の郭居敬本二十四孝ではなく、高麗本孝行録系の二十四孝であることを基本的に確認した。今後は各人物が古代から近世に至るまでいかなる変遷を経てきたかを,文献絵図を通じてさらに統合的に解明する予定である。
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