最終年度となる今年は、年度初めに計画した通り作年度までの補完作業(近現代ドイツ語圏の演劇、とくに、喜劇やそれらに対する社会的圧力の象徴である検閲に関連する書籍の蒐集、ならびにパソコンへの入力)を行なうとともに、関係資料の不足分を購入した。また今年度もドイツ演劇をめぐる資料収集および上演の実態調査のため(ドイツ、オーストリア、スイス)、今回はミュンヘン市立図書館、バイエルン国立図書館、ミュンヘン大学図書館などで特にヴェーデキントと検閲関係の資料を収集するほか、ウィーンのカール・クラウス文庫やスイスのチューリヒ国立文庫やベルンの演劇博物館に赴いて、特ににデュレンマット関係の資料を収集した。また近ミュンヘンでは「笑い」というキーワードに添って、当地のオペレッタ、政治性を含んだ旧東独ライプチヒのカバレット客演、大衆的なルートヴィヒ二世にまつわるミュージカル、その他即興喜劇などに接して近現代喜劇を土台にした演劇活動を調査した。またオーバーアンメルガウ(南独)の復活祭劇の上演にも参加して、そのなかの喜劇的部分を近現代喜劇との関連で考察し、実りある成果を得た。ミュンヘン大学演劇学研究所のバイヤーデルファー教授らに会って意見を交換した点も研究に利するものが大である。
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