今年度は、最終年度として、従来の研究の成果をまとめることに専念した。すなわち、代表者(奥田)は、公序および反致に関する判例のまとめを行い、分担者(早川)は、外国法の審理方法に関する判例のまとめを行った。その成果は、次のとおりである。 第一に、日本をはじめ多くの国においては、いわゆる「外国法の適用」については法律の明文の規定がなく、その解決は判例に委ねられている。これに対して、イタリア新国際私法(1995年)は、この問題に関する明文の規定を置いており(14条および15条)、この点が同法のひとつの特色になっている。そこで、これらの条文の起草過程およびこれらの条文に関する裁判例を中心に、抵触法の適用および準拠外国法の適用をめぐって、裁判所と訴訟当事者との間において、どのように権限・義務が分配されるかを総合的に検討し、あわせて、同じ問題に関する他国(日本、英国、フランス等)の取扱との比較をおこなった。その結果、イタリアにおける「外国法の適用」に関する実態および特色を明らかにすることができた。 第二に、イタリアの裁判所は、従来から公序を積極的に発動する傾向にあり、1995年の国際私法改正後も、この傾向は変わらない。その対象となった外国法は、東欧・中近東・北アフリカ・南米などのほか、とりわけイギリスなどのEU域内の法律も含まれている。ただし、公序違反が否定された例も多く、慎重な外国法の認定を基礎としていることが伺われる。この点は、日本の裁判所における公序の発動にとって、大いに参考になる点であろう。これに対して、反致は、1995年改正以降に初めて認められたためか、判例はほとんど見当たらなかった。
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