本研究は、インターネットをはじめとするコンピュータ・ネットワークの急速な普及に対応した情報の保護というテーマを中心に据え、情報保護法制という、これまで研究対象とされることのなかった分野について総合的な検討を行うことを目的としている。 本年度は、本格的検討のための準備として、研究室内にLANを構築し、当該LANを活用して、情報の保護に関する問題点の洗い出しを行った。また、それと並行して、ネットワーク上で発生しうる情報保護の諸問題について、中央官庁や情報通信関連企業において実務に携わっている方々への取材も行った。その結果、主に次の2つの事が明らかになった。まず第一に、インターネットの整備によって、個人が第三者の有する情報にアクセスすることが極めて容易になってきているということである。特に、電子商取引の普及に伴って、コンピュータに蓄積された第三者の情報への侵害事例が増大すると考えられる。そして第二に、そうした問題に対して、これまでは、刑法による電磁的記録の保護、不正競争防止法による営業秘密の保護、電気通信事業法による通信の秘密の保護など、個別の法律による断片的な保護が行われているにすぎないということである。 来年度は、これらを踏まえ、保護されるべき情報の範囲、ならびに規律対象とされるべき行為類型について整理を行う。個別の法律の枠にとらわれず、民事的救済、刑事的救済、行政による規制など、様々な選択肢を考慮に入れた上で、情報保護法制について総合的な検討を行う。
|