研究概要 |
本年度ソフトウェアの登録制度などを参考にソフトウェア著作物の強制執行を検討することを目的として研究に着手した.そして強制執行の議論の前提となるソフトウェア著作物の取引形態を考察をした.通常ソフトウェアは有体物の記憶媒体を通じて取引されている.そのため,従来書籍などの一般の著作物との比較でソフトウェア著作物のライセンス契約の法的性質が議論されてきた.この点に関してドイツでは債権的契約と考える立場と有体物を対象とした売買契約と考える立場が対立している.これらの議論を基礎にすれば,前者では著作権に対する強制執行の問題,後者では動産の強制執行の問題として議論することが可能であることが分かった. しかし,現在ソフトウェア著作物の取引形態は,有体物の記録媒体によらずにオンラインによる取引が広まってきている.特に米国ではソフトウェア・ライセンス契約の統一法UCC-2B(関連したUETA)の起草作業が進行中である.同草案ではライセンサーの保護について検討されている.UCC-2B立法のわが国への大きな影響も予想され,ライセンス契約の法的性質に関する検討の重要性が増している.そして,米国におけるライセンス契約の合意により定められるライセンサーとライセンシーの権利を考察することは,ソフトウェア著作物の強制執行の問題に関して著作権に対する強制執行に限定するのではなく,より広く債権的権利に対する強制執行の問題も検討する必要性があると考えられる. 現在,ドイツにおける使用許諾契約の議論と強制執行の議論のまとめている(ソフトウェア情報センター報告書に掲載準備中).また,米国におけるライセンス契約の議論はNCCUSL(全米統一州法会議)の資料で考察している.これらの考察を続け次年度で研究をまとめる予定である.
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