公共部門における人材戦略の展開について、とくに地方政府を中心に焦点をあてて研究を試みるのが本研究である。まず平成10年度、研究代表者と研究分担者の間でそれぞれの専門領域から既存の利用可能なデータや論文を検索したうえで検討した。結論からいえば、既発表の文献に直接利用できるものはそれは多くはなく、今後独自の資料・情報収集が不可欠であることを確認した。そこで、間接的なバックグラウンドデータとして、都道府県・市町村関連の50年史の類いを収集するとともに、多数の自治体の人事および研修担当の部局に協力を要請し、インタビュー調査を重点的に行いつつある。人事行政は不可避的に個人情報を含んでおり、プライバシーの観点などから慎重な態度をとる自治体も少なくない。また政府間レベルの人事交流は、昨今天下りとして厳しい批判をうけているものもある。しかしながら大多数の自治体は研究の趣旨に理解を示し、可能な限りの協力をしていただいている。 現在、そうした聞き取り調査の結果得られた知見、すなわち人事交流の数字であらわれた実績の経年変化や、数字ではすくいとりえないような情報、たとえば派遣要請の決定過程やそれに対する人事部局、予算部局、首長、議会との関係などを整理しながら分析している。最終年次である11年度には、こうした作業を継続することによって、人事交流のシステムを総体として理解できるように提示したい。
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