平成11年度においては、前年度の研究成果を踏まえて、研究代表者と研究分担者のそれぞれの専門領域から課題である人事交流の分析にアプローチをするとともに、意見交換を行った。 研究代表者は、日本における地方行政、中央地方関係についての自らの研究を機軸として、現代国家における公共部門の人材戦略の形成を、組織の相互の関係から分析し、主として都道府県を対象としてインタビュー調査ならびに資料の収集整理を行った。前年度からの継続として、都道府県内部における人事交流(都道府県と域内市町村の人事派遣、受け入れ)を分析する作業を進展させた。 研究分担者は、日本における人事政策、人事行政にかんする研究蓄積および実務家としての経験をふまえて、公共部門の人材戦略の一環としての人事交流を、個々の組織における基本となる生存戦略ととらえて、その分析を進めた。とくに、前年度に引き続き、組織における意思形成のプロセス、政策のフォーマル、インフォーマルな決定のプロセスを詳しく調査分析することが出来た。 以上のような研究代表者、研究分担者のぞれぞれの研究から、我が国における公共部門の人材戦略の一環として、人事交流が行われてきたこと、またそれは中央から、あるいは府県からの一方的な戦略展開ではなく、市町村、政令指定都市、府県、地方団体などが中央の各省庁との自発的、相互的な関係のなかで次第に形成されてきたことを確認した。
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