官僚、政党、有権者をプレーヤーとする、簡単な(しかし日本の政治過程の特徴をある程度反映した)ゲーム・モデルを開発した。このモデルでは、政策を立案できるのは官僚だけで、政党は官僚の作った政策案を受け入れるか拒否するかしか出来ない。政党が政策案を実施するかどうかの決定をし、実施した政策(あるいは新政策の不実施)の結果が明らかになった後、有権者が選挙で政権党か野党を選択する。それぞれのプレーヤーは、他のプレーヤーの(政策についての)選好については不完全な情報しか持っていないが、それに加えて有権者は、政策の効果についても他のプレーヤーより不確かな情報しか持ちあわせていない。このような設定でゲームの解を求めたところ、官僚の戦略的行動によって政党の選挙結果を左右する可能性があることや、有権者が間接的に官僚の意思決定に影響を及ぼせることが明らかになった。 今後の主な課題は、現段階ではプレーヤーの限定合理性のモデル化が情報の不完備性の程度差を捉えるに留まっているのを、より現実的なものにすることと、官僚のインセンティブの内生化を図ることである。前者については、とくに有権者に注目して考察を進めている。有権者は原理的には政策決定過程のプリンシパルであるが、具体的な政策立案過程では主役にはなれない。そのような有権者の意向が反映されるということはどういうことかをモデル化の前に明確にしておく必要がある。後者については、官僚や研究者とのプリ・サーベイ的なインフォーマルな議論からモデル化の方向を模索している段階である。
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