研究概要 |
部分的コミュニケーションのある自発的寄付メカニズムの実験研究。寄付金の提供額はコミュニケーション・ネットワークが連結しているか否か、及び、どれだけ早く経済主体が情報をシェアできるかに依存する事が解った。コミュニケーション・ネットワークが連結しており、経済主体がよりスムーズに情報をシェアできる様になる事によって、個人の最適寄付提供額は増加するのである。 ダブルオークションの取引の安定性に関する実験研究。経済理論では経済効果を最大限引き出す取引形態は「完全競争市場」であるが,この取引形態が実際採用されている商品市場はごくわずかであり,この市場は専ら理論上のモデルとして分析の対象とされている.本研究プロジェクトではこれまで「完全競争市場」とほぼ同じ市場成果をもたらすことで知られていた「ダブルオークション」という異なる取引形態の導入が安定かどうかを「完全競争市場」の理論により予測し被験者を使った実験により検証した.研究成果は理論と実験結果は同じ,つまり理論上安定な場合は実験でも安定,理論上不安定な場合は実験でも不安定であることがわかった。 「責任と補償」の観点からの「配分の衡平性」に関する理論研究。衡平な資源配分の社会的意思決定に際して、帰結に対する個人の責任要因と非責任要因とを区別し、後者に起因する社会的不均等のみを社会的補償の対象として是正する様な配分ルールの存在可能性について分析した。この問に関する従来のこの分野の成果は、不可能性命題として要約されてきたが、責任性の概念により忠実に再定式化を行う事によって、かなりの可能性定理がある事を明らかにした。
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