(1) アジア通貨「危機」が勃発してからほぼ1年半の期間を経過したが、この1年半の「危機」の推移と拡散の過程を検証した。その結果、つぎの3グループに分類することができる。 (a)回復組:「危機」からの脱出をみせる韓国、マレーシア、フィリピン、タイの4カ国がこれに含まれる;(b)「危機」からの脱出の見通しが未だに立たず、いまなお「低迷」の過程に位置するイン ドネシア、(日本)、シンガポールの3カ国がこれに入る;(c)これまで比較的に健在であったのが年(1999)明けの最近では「危機」の、かかる影響がじわじわと身に染み込んでくる。台湾、香港、中国からなるいわゆるスリーチャイナがこの部類に当たるとみてよい。 (2) 以上、3つの部類が発見されたが、それを経済学的に一つの論理を持って全体を説くことは大変難しい。一方、各国の政策的対応は、これまた各国において大きく異なっており、一本調子の捉え方は難しい。その点で、IMF融資条件への批判的論調がもたげてきたことは理解できないことではない。 (3) ユーロの発足と「華人経済圏」の形成がアジアの単一通貨の創設にプラスに働くとみられるが、イントラ・アジア貿易における日本の地位の低下はマイナスとなる。アジア通貨を創設するにはに日本の輸出増大と国内市場の「開放」、さらには通貨「哲学」の培いは急務である。通貨政策史におる地域通貨の位置づけが必須としよう。その意味で、アジア通貨構想は肉付けが急務となろう。
|