本研究は、(1)保険の本質とは何か、(2)保険会社の機能とは何か、(3)保険業への公的規制のあり方を検討した。2年間の研究期間で、明らかになった点は、以下の通りである。 ・保険とは、多数の契約者が保険者(保険会社)ヘ保険料を預け、将来、事故が発生した場合に保険者から保険金を受取る社会的制度である。社会的制度とは、保険が「大数の法則」に基づいて成立つ制度であり、契約者が1人では成立しない制度であるという意味である。したがって、契約者が保険会社に預ける保険料のうち、将来の保険金支払いに相当する純保険料は、保険会社が一時的に契約者から預かっているだけであり、保険事故が起こって支払われる保険金は、「移転所得」である。 ・確定前払い「平準保険料方式」が採用されているため、保険のシステムにおける保険会社の役割は、純保険料を預かり、将来の支払いに備えて、資金運用を行なうことである。保険の本質は経済的損矢を補填することであるのに対し、保険会社の機能は経済的損失を補填する制度を保持するサービスを提供することである。 ・保険、とりわけ生命保険は、長期にわたって継続的に取引されるサービスであるが、いったん契約が成立した後は、現状では保険会社の行動に任せられる。そのため、資金運用を中心とした維持・継続業務に関して、何らかの公的規制が必要である。 ・保険の本質と保険会社の機能は、機械保険カルテル事件に係わる課徴金の計算に際して、保険会社の規模測定をめぐって、現実的な問題となって現われている。
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