今年度は、研究計画に従って、昨年度までにほぼ収集し終えていた「企業ダイベストメント」のデータをもとに、とくに企業の「部分売却」がわが国資本市場に及ぼした影響を実証調査してみた。その調査結果の一部は、日本経済財務研究学会全国大会(於東洋大)にて昨年度秋に口頭報告したものに、データを加除し、かつ大幅に修正などを加えたうえで、「企業リストラクチャリングとM&A」(村松司叙と共著:同文舘発行)第4章に掲載した;わが国企業に典型的に見られるタイプのダイベストメントの形態として部分売却に焦点を絞って、そのニュース公表が資本市場に及ぼす影響を調べた。米国における同種テーマでの研究を数種吟味したのち、そのうちとくに1984年に発表された、J.D.Rosenfeldらの調査と出来るだけ比較可能な調査を試みた。わが国上場会社60社をサンプルとして、1991年10月から1996年12月までに実施された企業ダイベストメント(部分売却)のニュースが公表される前後の株式の異常収益率で測定した(いわゆる「イベント・スタデイ」の方式)結果によれば、わが国においても、米国においてほどに鮮明ではないが、そのニュース公表によつて、株式の富に対してプラスの効果が発生していることが判明した。すなわち、企業のダイベストメントといったイベントは、資本市場ではグッドニュースとして受け止められているという結論に近づいたが、ただし、その調査結果は必ずしもダイベストメント・ニュース公表のどの時点においても、統計的に有意な結果とは言えなかった。
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