平成10年度・11年度に収集し、かつ調査分析をおこなってきた、わが国(東証上場)企業の中から採取した「ダイベストメント」企業のデータのサンプル数をさらに追加して収集した。さらに、それらのデータ追加をふまえて、再度「イベント・スタディ」によって、ダイベストメント・ニュースが株式市場に与えた影響の有無・大小を調査した。また、この企業ダイベストメントに関して、別な観点、すなわち、ケース・スタデイ(クリニカル・スタディとも呼ばれる)、および財務的成果分析からの調査・結果にも着目しつつ、それらについて文献調査をも併せておこなった。それらの調査結果は、薄井彰(青山学院大学教授;平成12年3月まで)編著『M&A21世紀第2巻バリュー経営のM&A投資』(中央経済社)第5章「ダイベストメントと企業価値創造」にまとめた。企業ダイベストメントについて、単にサンプル数を増やしたのみならず、さまざまにグルーピングを行ってさらなる分析を試みた。つまり、ダイベスト事象をとくに「部分売却(セル・オフ)」に限定した上で、金額公表・非公表のケースや、部分売却側企業と部分買収側企業の両方の株主への影響を調べてみた。その結果、昨年度までに見た結果とほぼ同じく、米国における調査結果とは平均的に見て異なっており、部分売却企業についてはともかく、部分買収企業の株主に対しては、必ずしもプラスの効果が発生していなかったことが判明した。他方、個々のケースでみると、米国の調査結果とは全く逆の(つまり、売却側と買収側の双方の株主にマイナスの効果が発生したという)ケースも見られたのである。
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